ジェインに舞いおりた奇跡 Plain Jane
中村凪子・訳 ソニーマガジンズ 800円 [Amazon]
ルイジアナ州の小さな街レインで生まれ育った精神科医のジェイン。人気ラジオ番組を持ち、町の歴史記念物に指定されるほどの古い屋敷に愛犬と暮らす、いわば成功者であるが、ちょっぴり太めで冴えないために、私生活はぱっとしない。少女時代に美しい母親から「プレイン・ジェイン(おそまつジェイン)」と呼ばれた心の傷をひきずってもいる。そんなジェインのクリニックに、ある日ひとりの男性患者が訪れた。彼の言動に12年前の悲惨な事件の陰を見たジェインは、死んだ友人への思いから捜査を開始する。★★★★☆
▽著者はこんな人冬の犬 Winter Dog
中野恵津子・訳 新潮社/新潮クレストブック 1900円 [Amazon]
カナダ東端の厳冬の島ケープ・ブレトン。動物たちとともに祖先の声に耳を澄ませながら生きる人々がいる――人生の美しさと哀しみに満ちた8篇。表題作は、力は強いが「まったく役に立たない」犬と少年を描く。忘れられない思い出として語られる猛吹雪の日の秘密。犬が私たちと暮らしたのは短い年月で、いわば自業自得で自分の運命を変えたのだが、それでもあの犬は生きつづけている。私の記憶のなかに、わたしの人生のなかに生きつづけ、そのうえ肉体的にも存在しつづけている。この冬の嵐のなかで、犬はそこにいる。耳と尻尾の先端が黒く、家畜小屋のなかや、積み上げた薪の山のわきや、海に面した家のそばで体を丸めて眠っている、あの金色と灰色の混じった犬たちのなかに。(p.75)心にしみわたる傑作8篇。おすすめ。(2004.3.21 白耳)
★★★★☆
名犬ノップ Nop's Trials
大西央士・訳 集英社 2300円 [Amazon]
ボーダー・コリーのノップは、農場主ルイス・バークホルダーのパートナー。牧羊犬競技会のチャンピオンでもあるノップは、ライバル飼い主の陰謀で誘拐されてしまう。過酷な運命に翻弄されるノップ。懸命に行方を探すルイスと再び巡り会えるのか――。ノップは白黒のボーダー・コリーで、耳のところにふさふさした茶色い毛がはえていた。走るときはいつも映画スターのスポーツカーのように身を低くして、まさに流れるようだった。鳥猟犬をつれて狩りをする人なら、羊の群に近づくノップの姿を見ると、「ポイント」の姿勢をとったときの鳥猟犬によく似たところがあるのに気づくだろう。(p.11-12)ボーダーの飼い主さんなら、上記のような記述に思わず頷いてしまうことでしょう。映画『ベイブ』でもおなじみのトライアルの場面秀逸。読み応えあり。続編『名犬ホープ』(NOP'S HOPE) も集英社から出ています。まだあるのかなあ?(2000.8.29 白耳)
★★★★☆
名犬ホープ Nop's Hope
大西央士・訳 集英社 2200円 [Amazon]
『名犬ノップ』の続編。ホープはノップの子。夫と娘を交通事故で亡くしたペニーは、心の空白を埋めるために、ボーダー・コリーのノップを訓練して、アメリカ各地の競技会を転戦する旅に出る。目標は全米牧羊犬競技会決勝大会への出場。★★★(えこひいき)
加瀬秀明・訳 講談社 1600円 [Amazon]
ワイマントは犬連れ記者。マコは首輪に記者証をつけて朝日新聞社内を歩き回っており、取材にも同行、動物関係はもちろんのこと、皇族やトヨタの社長に会うときも犬連れ。「外人だからしょうがねえや」という受け入れ側の諦観が見えるような気もするが、幼稚なリクツを振り回すエゴ団体に比べれば、ひとりでやってるだけマシである。その一徹さ(無頼というべきか)には羨望すら感じる。★★(マコに対する愛情に敬意を表して)
マイ・ドッグ・スキップ My Dog Skip
中西秀男・訳 筑摩書房 1262円 [Amazon]
1996.3.5初版。原著(c)は1995年。同タイトルの映画の原作です。とはいえ映画のような大きな事件は起こらず、1940年代のアメリカ南部の少年(と犬)の生活が淡々と語られます。とはいえ映画と同じように、ラストでは泣けてしまうのだった。★★★★
つい近ごろのこと、ぼくはひょっこりスキップの写真を一枚見つけた。真っ黒い顔に長い鼻先をして、何かクンクン嗅いでいることろだ。尾はピンとまっ直ぐに立てて身構えているし、何かに興奮したのだろう、目もキラリと光っている。四十年以上も前にとった古い写真だが――正直に告白する。ぼくは大人になった今も、スキップを思い出すと胸のいたむ思いがする。(p.8)少年少女時代に犬と付き合った経験がある人なら、この「胸のいたみ」を共有することができるだろう。誰にも美しくて切ない思い出がある。
★★★★☆
Copyright(c)2000-04 by Dog-Ear Press.
All rights and bones reserved.