白い犬とワルツを To Dance With The White Dog
兼武進・訳 新潮社/新潮文庫 514円 [Amazon]
話題の本。98年に文庫化、初版3万部の本が、発売から三年以上を経過したいま、2か月で15万部も増刷、累計20万部を突破したというからすごい。仕掛け人は津田沼の書店員さんというから、これまたすごい。でも、犬本愛好者としてはもちろん、こうなる前に買い求めたことを付け加えておくぞ。★★★☆
老人と犬 Red
金子浩・訳 扶桑社/扶桑社ミステリー 650円 [Amazon]
メイン州の小さな町で雑貨店を経営するラドロウは、川釣りを楽しんでいる最中に、ショットガンを持った不良少年たちに愛犬レッドを撃ち殺される。長い間苦楽をともにしてきた愛犬の突然の死。ラドロウは然るべき裁きを求め行動を開始する。★★★★
1999.6.30初版。ケッチャムという人の本ははじめて読みました。オビに「動物愛護暴力小説」とあらば読まずばなるまい。しかも、愛犬を殺された爺さんが復讐に立ち上がるって話らしいではないか。
で、読んだ。薄いからすぐ読める。
いやあ、これはいい。いい小説だなあ。巻末の解説を読むと、どっちかというとバイオレンス系サイコ系な作家らしいが、そういう感じは全然しなかった。そりゃあ犬を殺されたら、ショットガンでもナイフでもなんでもつかって復讐するってのが人の道でしょう(違うか)。
主人公のラドロウが、六十何歳という年齢にしては元気すぎる(笑)のがやや気になるけど、そんなことはどうでもよろしい。彼は、ただしい。
決闘シーンから結末にいたる数十ページは、なかなか痛々しいものがある。本当はそんなに悪い子じゃない二人を殺してしまうなんてと思わないでもない。さらにラドロウに襲いかかる病魔も、過酷すぎるぜ。けれど、しかし最後の最後で救われるものがある。犬は、人を、救う。(1999.7.24 黒鼻)
★★★★
バベルの犬 The Dogs Of Babel
小川高義・訳 角川書店 1800円 [Amazon]
2004.10.30 初版。原著(c)は2003年。★★★★
犬嫌い Barking At Butterflies And Other Stories
嵯峨静江・他訳 早川書房/ハヤカワ・ミステリ 1100円 [Amazon]
ひさしぶりのポケミス。犬タイトルで即買いです。エヴァン・ハンターの短編集。エヴァン・ハンターはエド・マクベインの別名ですね。★★★★
25時 The 25th Hour
田口俊樹・訳 新潮社/新潮文庫 629円 [Amazon]
厳冬のニューヨーク。モンティはあす収監される。刑期は7年。刑務所で若い白人男性を待ち受ける運命は恥辱に満ちている。選択肢は服役、逃亡、自殺――モンティは愛する者たちと淡々とした一日を過ごす。★★★★
ジェインに舞いおりた奇跡 Plain Jane
中村凪子・訳 ソニーマガジンズ 800円 [Amazon]
ルイジアナ州の小さな街レインで生まれ育った精神科医のジェイン。人気ラジオ番組を持ち、町の歴史記念物に指定されるほどの古い屋敷に愛犬と暮らす、いわば成功者であるが、ちょっぴり太めで冴えないために、私生活はぱっとしない。少女時代に美しい母親から「プレイン・ジェイン(おそまつジェイン)」と呼ばれた心の傷をひきずってもいる。そんなジェインのクリニックに、ある日ひとりの男性患者が訪れた。彼の言動に12年前の悲惨な事件の陰を見たジェインは、死んだ友人への思いから捜査を開始する。★★★★☆
▽著者はこんな人冬の犬 Winter Dog
中野恵津子・訳 新潮社/新潮クレストブック 1900円 [Amazon]
カナダ東端の厳冬の島ケープ・ブレトン。動物たちとともに祖先の声に耳を澄ませながら生きる人々がいる――人生の美しさと哀しみに満ちた8篇。表題作は、力は強いが「まったく役に立たない」犬と少年を描く。忘れられない思い出として語られる猛吹雪の日の秘密。犬が私たちと暮らしたのは短い年月で、いわば自業自得で自分の運命を変えたのだが、それでもあの犬は生きつづけている。私の記憶のなかに、わたしの人生のなかに生きつづけ、そのうえ肉体的にも存在しつづけている。この冬の嵐のなかで、犬はそこにいる。耳と尻尾の先端が黒く、家畜小屋のなかや、積み上げた薪の山のわきや、海に面した家のそばで体を丸めて眠っている、あの金色と灰色の混じった犬たちのなかに。(p.75)心にしみわたる傑作8篇。おすすめ。(2004.3.21 白耳)
★★★★☆
名犬ノップ Nop's Trials
大西央士・訳 集英社 2300円 [Amazon]
ボーダー・コリーのノップは、農場主ルイス・バークホルダーのパートナー。牧羊犬競技会のチャンピオンでもあるノップは、ライバル飼い主の陰謀で誘拐されてしまう。過酷な運命に翻弄されるノップ。懸命に行方を探すルイスと再び巡り会えるのか――。ノップは白黒のボーダー・コリーで、耳のところにふさふさした茶色い毛がはえていた。走るときはいつも映画スターのスポーツカーのように身を低くして、まさに流れるようだった。鳥猟犬をつれて狩りをする人なら、羊の群に近づくノップの姿を見ると、「ポイント」の姿勢をとったときの鳥猟犬によく似たところがあるのに気づくだろう。(p.11-12)ボーダーの飼い主さんなら、上記のような記述に思わず頷いてしまうことでしょう。映画『ベイブ』でもおなじみのトライアルの場面秀逸。読み応えあり。続編『名犬ホープ』(NOP'S HOPE) も集英社から出ています。まだあるのかなあ?(2000.8.29 白耳)
★★★★☆
名犬ホープ Nop's Hope
大西央士・訳 集英社 2200円 [Amazon]
『名犬ノップ』の続編。ホープはノップの子。夫と娘を交通事故で亡くしたペニーは、心の空白を埋めるために、ボーダー・コリーのノップを訓練して、アメリカ各地の競技会を転戦する旅に出る。目標は全米牧羊犬競技会決勝大会への出場。★★★(えこひいき)
アンダードッグス Underdogs
伏見威蕃・訳 文藝春秋/文春文庫 733円 [Amazon]
2000.10.10初版。原著(c)は1999年。本邦初訳(なの?)の作家。タイトルだけ犬がらみで、なかみはまったく関係なし。じゃあ紹介するなよ。
舞台は、マイクロソフトとボーイングとスターバックスの街シアトル。むかしむかし大火災で燃え落ちた街。その後、一階分上に新たな街を建設したそうな。ということは地下には広大なゴーストタウンが?(どうやら本当らしい)
そのアンダーグラウンドに、少女を人質にした悪党が逃げ込んだ。ベトナムの地下壕・地下道で工作したチーム“アンダードッグス”のひとりが呼び出され、地下へもぐることに――。
なかなかスリリングでした。鼠も下水もあり(げええ)で閉所恐怖症の人にはつらいかも。
内容にはあまり関係ないから書いてしまうけど、モチーフは『不思議の国のアリス』。もぐる人はルイスだし、恋人はダイナだし。著者はイギリス人なのになぜシアトルが舞台に、と不思議でしたが、シアトルはどうでもよくて、まず「アリス」ありき、地下ありきってことなのだな。
ベトナム帰りのトラウマなんかはお約束だけど、これがないと「ダイ・ハード」になっちゃうからなあ(笑)。地下の「警部」なかなかよろしい。
次作は『くまのプーさん』だそうで、なんだか楽しみ(なんでだろう)。
巻末のアリスがらみの訳注、あってもなくても。(2000.11.22 黒鼻)
★★★☆
デイナのひそかな生活 Hidden Life Of Humans
豊田菜穂子・訳 WAVE出版 1600円 [Amazon]
人間たちの隠された生活。ピンとくる人は犬本通。★★★
のら犬ローヴァー町を行く Rover's Tales
田口俊樹・訳 早川書房 1900円 [Amazon]
訳者あとがきによると、原著には“犬の十字軍戦士、犬の世界を旅する”という副題がついているそうです。著者にしては異色のエピソード・ノヴェル。「生まれつき群れなきゃ、生きられないタチなんだろうよ」と老犬がいった。「独立心を持つにはそれなりの脳みそがいる」(「老骨」 p.190より)しばしば訓話めいた雰囲気も漂うが、ミステリ作家ならではの38編。カバー、本文の挿画いい。(2000.7.1 白耳)
★★★★★
ママ、大変、うちにコヨーテがいるよ! A Coyote's In The House
高見浩・訳 角川書店 1600円 [Amazon]
ハリウッド渓谷にすむ野生のコヨーテ、アントワン。アントワンは住宅地でゴミあさりをしている最中に見覚えのあるジャーマン・シェパードに出くわす。彼を専用のドッグ・ドアから家の中に招き入れたシェパードは、かつてハリウッド映画で大活躍した名犬バディだった。「なあ、おい、おれと入れ替わってみる気はないか?」ふかふかのカーペットがはられたファミリールームで、バディはアントワンに言う。「で、リスやウサギを追いかけまわしたいのかい?」子供たちが何が好きかをよくわかっていなければ、こういうふうには書けない。渓谷でのエンディングはかっこよすぎて涙が出ました。こんないかした物語、子供だけに読ませておく手はない。(2005.10.18 白耳)
「ああ、リスやウサギを追いかけまわすのは嫌いじゃない」
「じゃあ、猫を追いかけまわすのは?」
「猫なら、これまでに何百匹もおいかけまわしたさ」
「でも、あいつらを食べたことは?」
「なあ、おい」バディはのっそりと立ち上がった。そうすると、耳のとがった痩せっぽちのコヨーテは一まわりも二まわりも小さく見える。まだまだこんなチビに遅れをとることはない、とバディは確信していた。「おれが何を追いかけて何を食おうと、それはおまえさんの知ったこっちゃない。それを皿にのせて食おうと、地面に置いたまま食おうとな。おまえさんのきいたふうな、冷やかしの文句を聞くのはもううんざりだ。おれがペット犬だってことをもう一回でも言ってみろ。そのもしゃもしゃの尻尾を食いちぎって、おまえの口に突っ込んでやる」(p.49)
★★★★☆
幻想の犬たち Dogtales!
福島正実ほか訳 扶桑社/扶桑社ミステリー 781円 [Amazon]
1999.11.30初版。原著(c)は1988年。犬がらみのファンタジーが16本入ったアンソロジー。★★★☆
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