バスターのきもちBuster's Diaries As Told To Roy Hattersley ロイ・ハタズリー Roy Hattersley 山田久美子・訳 朝日新聞社/朝日文庫 620円
「男」と暮らすようになったおれは堕落しちまったようだ。こころならずも愛想をふるまくし、尻尾も振っちまう。まあ、そのうちどっちが上だか思い知らせてやるつもりだけどな――ジャーマン・シェパードとスタッフォードシャー・ブルテリアの間に生まれたバスターが、英国労働党議員のハタズリー氏に口述した日記。
犬や猫がしゃべり出すと、とたんにむずむずしてしまうために、長らくつん読状態であったことを正直に告白しておく。いや、でも読んでよかった。これほどウィットに富んだ「犬本」はほかにないだろう。子犬の頃に母犬を失い、野犬収容所などに収用されたこともある来歴からか、語り口調は粗野で生意気であるが、それこそが決め手であった。たとえばこんなかんじ。日本人が出てくるシーンから引く。
姿や行動はよく似てるかもしれないけど、犬を食べるのはお隣の国だということをいちおうお断りしておく。「犬好き」必読の書。
『この本はおれが書いた。わぉぉぉぉ〜〜ん』という帯の文句、たいへん気に入りました。(2003.10.31 白耳)
★★★★★ ▽バスターの公式サイト
http://www.busterhattersley.com 犬のディドより人間の皆様へOne Dog And Her Man By Dido ディド著 (チャップマン・ピンチャー協力) Chapman
Pincher 中村凪子・訳 草思社 1800円 ラブラドール・レトリーバーのディドが語る犬の話。
協力者はけっこうまわりくどいタイプらしい(笑)。ピンチャー夫妻と暮らすようになった経緯、なわばり、嗅覚など犬の感覚、知能、コミニュケーション、食事、睡眠、散歩、シーズンなど、内容濃く、読みごたえじゅうぶん。(白耳)
★★★★ 私は一流新聞の犬記者 マコ著 (ロバート・ワイマント協力) 加瀬秀明・訳 講談社 1600円 ワイマントは犬連れ記者。マコは首輪に記者証をつけて朝日新聞社内を歩き回っており、取材にも同行、動物関係はもちろんのこと、皇族やトヨタの社長に会うときも犬連れ。「外人だからしょうがねえや」という受け入れ側の諦観が見えるような気もするが、幼稚なリクツを振り回すエゴ団体に比べれば、ひとりでやってるだけマシである。その一徹さ(無頼というべきか)には羨望すら感じる。
惜しむらくは内容のユルさ。動物虐待から、苛め、官民癒着、天下りなど、日本社会が抱える様々な問題に言及しているのだが、犬というラブリーちゃんを介在させたためか、訓話の世界に軟着陸してみたワン! みたいなことになっちゃっている。余技としてちょっとシャレてみましたということか。(1999.10.13 白耳)
★★(マコに対する愛情に敬意を表して) 犬たちの隠された生活The Hidden Life Of Dogs エリザベス・M・トーマス Elizabeth M.Thomas 深町眞理子・訳 草思社 1600円 冒頭で“これからあとのページでわたしが描こうとしているのは、11頭の犬のグループ――5頭の雄と6頭の雌――の生活記録である”と述べられているように、自らの飼い犬たちの長年に渡る観察記録である。
わたしは一頭のボーダー・コリーと暮らしているが、飼い始めの頃はわからないことだらけだった。犬について書かれた本や雑誌を読みあさり、また、獣医師を始めとする専門家の指導も受けたが、もっとも信頼できたのは、同じ犬の飼い主さんの話だった。著者は人類学者であり、いちいちの考察に専門知識の裏打ちがあることは確かだが、書かれていることの大半は、著者が“この目で見てきたこと”で、飼育環境の違いこそあれ、非常に興味深く読むことができる。愛犬家必読の書。(白耳)
★★★★★ 犬たちの礼節ある社会生活The Social Lives Of Dogs エリザベス・M・トーマス Elizabeth M. Thomas 木村博江・訳 草思社 1900円 名著『犬たちの隠された生活』のその後。トーマス家はニューハンプシャー州ピーターバラに転居。「所帯が大きかった頃は」人間5人、犬7頭、猫9匹、オウム5羽というから羨ましい限り。日本では宝くじでも当たらなければ無理でしょうねえ。『〜隠された』のほうでおなじみのスエッシ、イヌックシュック、ファティマはすでに老齢に達しており、3頭揃ってよれよれと犬としての営みを続けているらしい様子がなんとも。そこへ登場するのが、著者が偶然出会った「異種混合集団の発端」サンドッグ。そしてベルジアン・シープドッグのミスティ、オーストラリアン・シェパードとチャウチャウの混合パール、くせものルビー、夢の犬シーラと続く。著者のいう「異種混合集団」にはもちろん人間も含まれている。
少年少女時代に犬と付き合った経験がある人なら、この「胸のいたみ」を共有することができるだろう。誰にも美しくて切ない思い出がある。
この作品は99年に映画化されている。エピソードを組み合わせて原作にはない見せ場を作ってはいるが、40年代のアメリカ最南部の街の様子や人々の生活を知るにはいい手がかりになる。スキップはフォックステリアだが、映画ではジャックラッセルテリアを使っている。(DVD『マイ・ドッグ・スキップMY DOG SKIP』1999 WARNER BROS.)(2001.10.20 白耳)
★★★★☆ 【訓練・しつけ・相談系】
なぜうちの犬は、トイレの水を飲むのでしょうか? Why Does My Dog Drink Out Of The Toilet? ジョン・ロス&バーバラ・マッキーニ メディアファクトリー 1500円 “かわいい子犬の写真がたくさん”のQ&A集。カバー表紙に幼気な黒ラブの仔犬を用い、カバー折り返し及び見返し全面犬写真。
著者はドッグ・トレーナーと、もと作家。新聞のコラムをまとめたもので、犬の飼い主から寄せられた質問と著者の回答という構成。きっぱりとした言い切り型の回答とユーモアに、プロの自信と愛情を感じる。表題にもなっている質問に対する回答は「解決するのは簡単です。トイレの蓋を閉めなさい!」というもの。悩める飼い主さんの肩の力も抜けることでしょう。この手の本としては珍しくお買い得。(1999.6.22 白耳)
★★☆ 愛犬の愉快なトレーニング術91Dog Tricks アーサー・J・ハガティ&キャロル・リー・ベンジャミン Captain Arthur J.Haggety & Caril Lea Benjamin 木暮規夫・監修 平凡社 1500円 原著は1978年刊。古いです。著者は前アメリカ陸軍軍用犬部隊大尉とドッグトレーナー。A5変形判のかわゆい装幀で思わず買っちゃったが、役に立たなかった。犬種別「犬の“芸”の適性診断チャート」付き。むう。(白耳)
★☆ フリスビードッグFrisbee Dogs ピーター・ブルーム ペットライフ社 1800円 著者は――1976年世界フリスビー大会男性部門チャンピオン。愛犬ウィザード(ボーダーコリー)をワールドチャンピオンにし、人間と犬の両方でチャンピオンになった唯一の人。ウィザードは無敵のまま引退。フリスビー・ドッグの最高名誉のアシュレイ・ウィペット栄誉殿堂入りを果たす――という、すごい人、と犬。フリスビーの歴史に始まり、犬とディスクの基礎知識、基本トレーニング、上級者向けトレーニング、競技会及びルール、競技会に勝つ方法、また、犬との移動手段まで網羅した内容。本格的に始めたい向きには大いに参考になること間違いなし。とくに犬とのコミニュケーションについては一読の価値あり。フリスビーしない人と犬もぜひ。(白耳)
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