小学館/小学館文庫 457円 [Amazon]
2002.1.1初版。単行本は1992年11月小学館刊。読みました。読んで、泣きました。★★★★☆
徳間書店 1600円 [Amazon]
2001.5.31初版。第2回日本SF新人賞受賞作。著者は1971年和歌山県生まれ。
SF新人賞ってえぐらいですからガチガチのSFです。なにしろ装画が生〓(頼の旧字)範義だし(なつかしー)、植民惑星あり宇宙船あり精神感応者ありで、若いころならともかく、最近じゃちょっと手に取らないようなタイプの本。
それをなんで読もうと思ったのか。犬だから、です。ピジョンというこの惑星には「犬飼い」というのがおりまして、犬と精神感応して操ったりするんですわ。使い方としては牧畜だったり狩猟だったりで、いまとさほど違わないのですが、しぼりたての牛乳を運ばせてその振動でバターにしちゃう(無理なんだけど、そーゆー売りで商売しようとかするのよ)なんてことも出てきます。
地球からの進駐軍に支配されてしまったピジョンの連中が、なんとか自由を取り戻そうとするお話で、ま、よくあるタイプではあります。が、反乱軍(軍じゃないけど)に犬どもが加わっただけで、こんなにも感情移入してしまうのはわれながら問題だと思う(笑)。いやもうたまらん。元SF少年少女で犬好きだったら読む価値ありとみた。
新人の第一作ですから文章など未熟な部分は多く、完璧とはいいがたいが、よしとしよう。二作目も犬関係だったら買ってやるからがんばれよ(←えらそう)。(2001.5.29 黒鼻)
★★★★
岩波書店 1800円 [Amazon]
2002.1.24初版。筒井康隆先生の長篇書き下ろし。“マジック・リアリズム”で描く、愛の冒険、だそうです(帯)。
時代は近未来、「いま」からさらに状況が悪化し、“不良”が跋扈する日本。幼いときに犬に咬まれ、片腕が不自由になった小学六年生の少女が、行方不明の父を探すという物語。
ああ、なんか、他愛ないんだが、いいなあ。タイトルが意味不明なようでいて、実に意味アリなのだな。
もちろん、犬が出てくるから、というのもある。あるのだが、しかもこのもうすぐ70になろうという御大の書き下ろしだからというのもあるんだけれど、それでも、いい。
最近の新聞紙上でのインタビューで、あれこれ語っておられたが、それすらも、もう、いい。
ファンタジーである。必ずしも嬉しい楽しい出来事だというわけではないが、これはファンタジーだ。小学生から中学生に成長するこの主人公は、そのファンタジー世界に生きている。美しい世界ではない。むしろ邪悪な世界だ。それでも彼女は成長する。いやおうなしに成長する。
ううむ、ほかにもあれこれ言いたいことはあるのだ。しかし、筒井康隆が好きじゃない人には言っても意味がない。好きな人であれば言う必要がない。ようするにそういうことだ。読む価値、アリ。
この本で大切なのは(犬好きにとって、だ、もちろん)、主人公を支える要素として、「犬」が出てくることである。主人公は幼少時に犬に咬まれた、そして片腕が使えなくなった。しかし、だ。彼女は犬を恐れない。なぜならば、犬と語り合えるからだ。むろん、それは絵空事かもしれない。しかし、犬とともに生きる人間は、それを信じている。信じていなければ犬と暮らす意味がない。そう思うのである。(2002.2.20 黒鼻)
★★★★
筒井康隆の長編書き下ろし。マジック・リアリズムで描く、愛の冒険。
幼いころに犬に咬まれ片腕が不自由な少女。母を亡くした愛は仲良しの大型犬を連れ、行方不明の父を探す旅に出る。
ああ、なんていい作品なんだろう。『旅のラゴス』を思い出してしまった。ルビは若年者向けなのだろうが、いい大人こそ、こういう本を読むべきだ。
老人にもいろいろいるが、わたしはいつの時点でか「終わっちゃってる」老人が嫌いだ。古くさい価値観にしばられ、退屈極まりない話しかできないくせに妙にエバったりする。誠に申し訳ないが、できれば近寄りたくない。筒井康隆は間違いなく「終わらない」老人だ。心から長生きしてほしいなあと思う。(2002.3.6 白耳)
★★★★☆
新潮社 1300円 [Amazon]
「小説新潮」連載エッセイ「かくかく、しかじか」より23編。文章を書いて飯を食う身が、手紙ひとつ記せなかった。どんな言葉も、そらぞらしい。文章というものは結局、何事もなく、平穏に過ごしている者だけにしか、通用しないのである。あるいは、喜びごとだけのものだ、と断じてもよかろう。(p.103「紅鶴」より)上のようなことをあっさり書かれてはなあ。脱帽。
★★★
集英社 1500円 [Amazon]
初出「小説すばる」2000.1〜2002.8。“大人の男女に贈る”短編集。表紙はキジ猫。表題作「秋の猫」は、浮気癖のある恋人と別れ、猫を飼う女を描く。収録5本すべて犬猫がらみです。「秋の猫」猫、「幸運の犬」犬、「ドルフィンハウス」猫、「病む犬」犬、「公園まで」犬。
離婚する夫婦の愛犬をめぐる攻防を描いた「幸運の犬」いい。
いつ読んでもぶれの少ない安心感のある藤堂作品だが、今回は5本中2本が、女が主に生活のために男に取り入る話だというのがちょっと気になる。そういうのが“大人”だということか。(2002.12.10 白耳)
★★★★
草思社 1600円 [Amazon]
1997.10.6初版。読むだに腹の立つ本。本に対してではない。日本および日本人に対して、だ。★★★☆
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