バウリンガル


 だっこちゃん人形の「タカラ」が、犬の鳴き声から感情を分析する『バウリンガル』という商品を2002年2月に発売するという。新聞で見かけたのでちょっと調べてみた。

「動物と話ができたら……」と夢見たことはないだろうか。玩具メーカー「タカラ」(東京都葛飾区)が来春、“犬の感情分析器”を発売する。誰もが動物と話ができる「ドリトル先生」になれるなら本当に夢のような話だが、一方で「犬には迷惑」という専門家もいて、話題を呼んでいる。(毎日新聞 2001.9.6夕刊より)

『バウリンガル』は、首輪に取りつけた小さなマイク(送信機)で犬の鳴き声を拾い、手に収まるくらいの大きさの受信機で処理、犬の感情に変換する。
「感情」は、約100頭の犬の鳴き声に声紋分析を加えてデータベース化したもの。犬が鳴くと、声のトーンから「フラストレーション」「威嚇」「自己表現」「楽しい」「悲しい」「要求」の6種類に分類、そこから「ムカツク」「やったー」「つまんないよー」などの文字を受信機の液晶に表示、スピーカーから音声が流れる。一定期間の犬の感情を蓄積して「満足度」を評価する機能もある。評価結果から「ちょっと寂しいワン、もっと遊んでね」などといった文章が表示される。
 受信機側は48×48ドットの液晶と16ビットマイコン、16MBメモリ搭載。受信機と送信機の通信距離は最大7m程度。予価12,800円。タカラは20万個の販売を目標としており、分析した感情をメールで飼い主に届ける『バウリンガルメール』も開発中。

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 キテレツなおもちゃを次から次へ繰り出す姿勢には感心するが、これはあまりにも犬を知らない。だいいち犬が鳴かなければ無用の長物ではないか。意地悪な言い方をすれば、しじゅうキャンキャン鳴いている、しつけのわるい犬にしか向かない。

 我が家のテスにつけたらどうなるか。
 自慢じゃないがテスは1回も鳴かない日がある。鳴くとしたら、まず、外で行き会った犬に吠えかかられたときだ。上記6種類の分類では「威嚇」にあたるのだろうが、リードを引っ張って暴れ狂っているようなときに、おそらくは妙な声で「ムカツク」などと言っているにちがいない受信機を確認する余裕などない。

 次に、家にひとりで取り残されるとき。玄関のドアが閉まり、戻って来ないことがわかると猛烈に吠える。遠吠えだってする。こちらとしては鳴いたって鳴かなくたって後ろ髪を引かれているわけだから、そんなときに受信機から「悲しいよー」「寂しいよー」なんて聞こえてきてどうするというのだ。一定期間蓄積したところの犬の感情が「寂しいワン、もっと遊んでね」だったら、そのたびに暗い気持ちになるだろう。

 犬は満足したときや楽しいときには鳴かないと思う。鳴くのは怒っているときや不安だったりするときだ。そんな言葉を見たり聞いたりして面白がるというのなら、あまりにも悪趣味である。(2001.11.9)
 
 
株式会社タカラ http://www.takaratoys.co.jp/
「バウリンガル」プレスリリース(PDF 32kb) http://www.takaratoys.co.jp/company/pdf/010807.pdf
MYCOM PCWEB記事 http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/08/07/15.html



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