うんち問題


 犬のうんち。これは深刻な問題である。都内だったらどこの住宅街でも注意書きの百や二百は簡単に見つけることができる。
 「愛犬のフンは飼い主がきちんと始末しましょう ××区」のように、役所でくれる穏当な表現のものから、「ここで犬に糞をさせるな!」のように、強い怒気を発散する手製のものまで、こういってはなんだが興味が尽きない。

*
 『週刊文春』に、うんちを放置した人に注意をした男性の話が載っていた。「なんであんたなんかに言われなきゃなんないんだ」ときたらしい。男同士ということもあるのだろうが、いかにも頭のわるいおっさんのケチな言いぐさである。人ごとながら頭に血が上った。そういう手合いと話をするのは時間の無駄である。どうせ近所に住んでいるんだろうから、家を突き止めて門の前にうんち山盛り積んでやれ。いくらでも加勢するぜ。
*
 わたしは犬と一緒に出掛けるとき、市販のポリ袋に適当な長さに切ったトイレット・ペーパーを入れたものを持ち歩いている。犬が用を足したら、中のトイレット・ペーパーを出して拾い、ポリ袋に入れて持ち帰る。うんちはくるんだペーパーごとトイレに流し、ポリ袋は不燃ゴミとして捨てる。
 さいきんは専用グッズがたくさん売られている。それぞれに工夫が凝らされ、見かけも可愛らしいので、つい手を出してしまったことも何度かあるが、約3年をかけてたどりついた、もっとも合理的な方法が上記の手作りうんち袋である。日によっては一度では済まないこともあるので、常に2、3セットは持っている。軟便対策としてペットシーツ、古タオルを各1枚づつ。成犬になってからは、ある程度の予測ができるようになったから、余計なものは持たなくてもすむようになった。

*
 橇犬でも猟犬でも牧羊犬でも、家庭犬として飼うのなら、うんちを持ち帰るべきだ。とくに都市部で、アスファルトで塗り固められた場所にうんちをしても肥やしにはならない。ただの迷惑である。ひいては犬を飼う人々全体に及ぶ害悪である。
*
 アートとしての価値は否定しないが、読み取ることのできる文字は意味を持つ。フンとかクソといった語彙の印象は強烈だ。そういうもののない街で暮らしたいと、きっと誰もが思っていると願いたい。(2000.9.9)


INDEX|PREVIOUS|NEXT




Copyright (c)2000 by Shiro-Mimi and Dog-Ear Press.
All rights and bones reserved.