犬友1:会話編
【初級】
「こんにちわ」
「こんにちわ」
「いいお天気ですね」
「ええ、ほんとに」
「かわいいですね、何歳ですか?」
「3歳になりました。そちらは?」
「うちはもう7歳です。男の子ですか?」
「女の子です」
「お名前なんていうんですか?」
「マリアっていうんですよ、そちらは?」
「ゴンザレスです」
「マリアちゃんっていうんだー」
「ゴンザレスちゃんなんだー」
「どうもお引き留めしまして、じゃあねマリアちゃん」
「いえこちらこそ、バイバイ、ゴンザレスちゃん」
▽単語
男の子:オス 女の子:メス 〜ちゃん:敬称の一。
▽解説1
犬友の間では、相手の犬の性別をいうとき男の子、女の子を用いる。しかし、じぶんの犬の性別はオス、メスを用いることが多い。
▽解説2
相手の犬を呼び捨てにする人はまれである。ふつうちゃんをつける。さんや様であることは、まずない。また、飼い主に対しては敬語を用いるが、犬に対してはほとんどタメ口である。
【中級】
「こんにちわ。マリアちゃん元気ぃ?」
「こんにちわ。おっす、ゴンザレスちゃん。きょうは早いですね」
「ええ、なんだか雨が降りそうなので」
「毎日どれくらいお散歩されてます?」
「朝と夕方の2回です。そちらは?」
「同じですよ。たいへんですよね」
「ええ、ウンチしないんで困ってるんですよ」
「あれま、まだしてないんだー」
▽単語
ウンチ:うんち
▽解説
健全な犬には健全な腹具合が宿る。外でしか排便をしない犬の飼い主はとくに大変である。雨が降ろうが雪が降ろうが、台風だろうが二日酔だろうが、ともかく犬がその気になるまで付き合わなくてはならない。毎日のうんちは飼い主共通の悩みであり、どんな人でもこれを話題にすることにまったく躊躇がない。
【上級】
「こんにちわ」
「……こんにちわ、あの、どちら様でしたかしら?」
「ああ、ごめんなさい。イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのマリアです」
「なんだ、マリアママじゃない、わかんなかった」
「犬がいないとわかんないよね」
「ほんとに」
▽単語
〜ママ:飼い主の便宜上の呼称の一。
▽解説1
犬友は特別なことがない限り名乗り合うことがない。だが、犬の名は知っていることが多いので、便宜上、女性の場合犬の名+ママ、男性の場合犬の名+パパと呼ぶ。親しさの度合いによっては「〜ちゃんのママ・パパ」あるいは「〜ちゃんのお母さん・お父さん」とする場合もある。同様に、そこんちの子どもについては「〜ちゃんのお姉ちゃん・お兄ちゃん」という。まれに「母・父」「母上・父上」といったりなんかする人もいるが、かなり特殊な例である。
尚、この法則は、明らかに犬が家族を見下している場合でも、問題なく適用される。
▽解説2
犬友は近所に住んでいるので、思いがけないところで会うことがあるが、なぜか上記のようなことになることが多い。おそらく犬とセットで認識されているからだろう。これぞほんとうのワンセットである。冗談はさておき(笑)、そこで名乗ることになるわけだが、なんせ犬の名しか知らないから、「×丁目のなにがしです」といっても、わかりっこない。というわけで上記のような不思議な会話になる。(つづく)
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