他犬の空似


 増えたとは聞くが、Mダックスやシー・ズー、ゴールデンの比ではない。だから人様の家の犬と間違えられることはないかというと、そんなことはない。

 前の縄張りでは、よく「ケンちゃん!」と声をかけられた。最初は「いえ違います」といっていたが、数回目から「よく間違えられますが違うんです。テスといいます」というようにした。そうしたら、ついに本物のケンちゃんに会ったとき、「もしかしてケンちゃんですか?」「あ、もしかしてテスちゃんですか?」ということになった。
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 我々は新しい縄張りに移った。
 しばらくの後、散歩中に「ジョイくん!」と声をかけられた。
 そして数日後、こんどは「ハルちゃん!」と声をかけられた。
 どうやらこの辺には、ジョイとハルというボーダーがいるらしい。間もなく初診を受けに行った獣医で「うちにはボーダーは一頭だけ、ジョイという子が来てます」と聞いた。
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 この話まだまだ続く。
 ある日、やはり散歩中にカーテン屋さんの前でワゴンに積まれた端切れを見ている女性の足元に見覚えのある黒白……なんとハルちゃんだった。
「ああっ!」と叫んだのはほぼ同時。「鏡に映ってるのかと思った!」と飼い主さん。わはは。話してみるとやはりお互いに『犬違い』をされていた。
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 さらに話はまだまだ続くのよ。
 そしてつい先日、仲良くなったゴールデン&母と一緒に散歩をしていたら、「ハルちゃん」と声をかけられた。「ハルちゃんじゃないんです」というと「あら、そういえばママが違うわ」。その人、なんとジョイくんの飼い主さんだった。
「ジョイ見ていく?」と仰るので、お庭に入れてもらい、たいへん活発なジョイくんとしばらく遊ばせてもらった。帰りに「お近づきに」と泥だらけのテニスボールをもらった。

 業界ではよくある話。どういう業界だ?(2001.2.23)



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