いつも病気の犬
ゴールデンレトリーバーのマリーの脇腹に毛刈りの跡があった。
「子宮蓄膿症で手術をしたんですが、そのとき脇腹に脂肪のカタマリが見つかったんです。そっちのほうはけっきょく取らなかったんですけどね」
と飼い主さん。
マリーがそんなたいそうな病気だったとはまったく気がつかなかった。脂肪のカタマリは、そのままで大丈夫なのだろうか。
「たいへんだったね」
と頭をなでると、マリーはいつものように足に寄りかかってきた。
毎日きちんと散歩をさせてもらい、ときには自転車で引き運動までしている、心身ともに健康そうなマリーだって病気になるのだ。犬の病気は気づくのが難しいと言われるが、素早く適切な手当ができたのは、飼い主さんがよくマリーを見ていたからだろう。
*
一方、ヨークシャーテリアのリュウはいつも病気だ。昨年末はノミのせいでおそろしい病気にかかっていた。
なんでもシャンプーに出したらノミがついてきたという。
「だからもうそこにはぜったい頼まないの。じぶんで洗うの」
と飼い主さんはぷんぷん怒っていた。そのノミはリュウの尻尾の付け根あたりを刺したあと、尻の穴から体内に入りわるさをしたために、リュウの腹具合がおかしくなった。あわてて獣医に連れて行き、背中にぷちっとするお薬をもらったという。それが犬の腹具合をよくする薬ではないことぐらいわかったが、あまりにぷんぷん怒っているので何も言わなかった。
しばらくの後、ニットのお洋服を着たリュウに会った。体中から白い粉が出て困っているのだという。飼い主さんは、あのぷちっとするお薬のせいじゃないかしら、と疑り深そうに言った。自宅で使っているシャンプーのせいではないかと思ったが、余計なことは言わないにこしたことはない。
きのう久しぶりに会ったリュウはやはり病気だった。目やにが大量に出て目がふさがってしまい、獣医にもらった目薬をさしているのだという。しかし抱っこされたリュウはいつものようにつぶらな瞳をしばたたかせている。
「なんでもないように見えますけどね」
とわたしがいうと、
「いまはね」
と飼い主さん。気がつくと目やにが出ているから、しょっちゅう目薬をささなければならないそうだ。
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マリーもリュウも、愛されていることにかわりはない。(2002.2.24)
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