犬と生活  今月の「犬のいる風景」


【犬と水】
 犬は水を飲む。いつ飲むかわからないからボウルなどに水を入れて置いておく。
 テスは子犬の頃、水のボウルをひっくり返して床を水浸しにし、浮力でするする動くボウルを追いかけるという遊びに凝っていた時期がある。ひとりで楽しく遊ぶのはまことにけっこうなのだが、後片づけはできない。帰宅して最初にすることは雑巾がけという生活に疲れたので、ボウルをやめてタンク式の給水器にした。水がなくなる心配はないし、ちょっとつついたくらいではびくともしない。以来使い続け、いまので3台目になる。夏場の暑い日には水といっしょに氷を入れることもある。うっすらと結露したタンクが見た目にも涼しく、テスもおいしそうに飲んでいる(ような気がする)。


【犬とおもちゃ】
 犬はおもちゃで遊ぶ。テスはおもちゃをたくさん持っている。テニスボール、デンタルコットン(大・中・犬型)、押すと音が出る縫いぐるみ(ワニ、ブタ、骨型)、クマの縫いぐるみ、硬く結んでこぶを作った古靴下などである。
 このうちテニスボールは、おもちゃというより、テスの崇拝の対象なので別格として、ほかのものは気が向いたものを取り出しては遊ぶ。だが後片づけはできない。そもそも飼い主が後片づけが出来ないのだからしつけようもない。
 だからいつもそこらじゅうにおもちゃが散らかっており、ときどき踏んづけて「ちゅう!」と鳴ったりする。音の出るおもちゃは洗濯が出来ないので汚れ放題である。うちに遊びに来た人はさぞかし「ばっちいなあ」と思っていることだろう。


【犬と浴室】
 犬は浴室に入りたがる。さっぱりとシャワーを浴びたい、などと思っているわけではない。ただ浴室というところに入りたいのである。のんびりと湯船につかっていると、浴室の扉に黒と白の影が映る。無視していると前足でノックする。扉を開けると、そうっと入って来て、石鹸やボディブラシのにおいをかいで、「ふんっ」と鼻を鳴らして出て行く。誰もいなくても入っているときがあって、そういうときはバスマットに犬の足跡がついているからすぐわかる。
「風呂場に無断侵入した犬がいる!」
 と言うと、「えっ、なんのことですか?」という顔をしておろおろするのでおもしろい。


【犬と寝床】
 犬は寒くなると丸くなって眠る。寒ければ寒いほどきつく丸まって眠っている。犬専用のベッドやマットは、丸くなったときの身体の形に合わせてデザインされている。楕円形で、スポンジなどを詰めて縁高にしたものが多い。
 だからといって人の股の間を代用するのはどうかねテスよ。夜、ベッドでうっかり大の字で寝ようものなら、のしのしやってきてきてぐるぐる回ってすぽっと入る。丸くなって落ち着くと「ふーっ」と大きなため息をつく。寝心地がいいのはけっこうなことだが、布団の中の人間は「がにまた状態」のまま身動きできないのだよ。
 前に吉本ばななが、飼い犬2頭が股の間に入って寝ようとするので困る、というようなことを書いていたが、どこの犬もそうなのだろうか。20キロ弱のテスでもつらいのだから、ゴールデンなんかどんなかんじだろう。


【犬と石頭】
 犬は石頭である! ごくまれに「ごつん」と、壁の角などに頭をぶつけることがあってびっくりするが、本犬はへっちゃらだ。「だいじょうぶ?」と声をかけても、「はあ?」という態度である。ちょっと尻尾の先を踏んづけただけで「きゃん!」と悲鳴を上げるくせに、頭の「ごつん」は平気なのだろうか。
 先日、散歩中に知り合いに声をかけられた。振り返ると同時に足元で「ごつん」と音がした。一緒に振り返ったテスが植え込みの角に頭をぶつけたのである。「だいじょうぶ? 痛くなかった?」と、ぶつけたとおぼしきあたりを撫でたら、上目遣いになって「えへー」という顔をした。そのときばかりは、犬め、じぶんのドジが恥ずかしくて照れてるのだ、と思いましたねわたしは。(2003.11.24)


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