お客さん対策
テスはお客さん大好き犬である!
お客さんといえば、われわれ人間にとっては主に家へ遊びにやって来るごく親しい人々を指すが、テスの場合、玄関チャイムが鳴ったあとに顔を出す人はもれなくお客さんである。郵便や宅配便の配達人だろうが、新聞の集金人だろうが、定期巡回にやってきた警察官だろうが、消火器や換気扇フィルターのセールスマンだろうが、みんな歓待すべきお客さんである。
ピンポーン! と、涼やかな音がするや誰よりも早く玄関に走り、落ち着きなくハアハアと荒い息をつきながら待っている。ときにはぴすぴすとせつなげに鼻を鳴らすことさえある。「もう嬉しくって嬉しくってたまらない!!」といったふうでほほえましいのだが、飼い主側は来訪者の種類によっては対応を変える必要がある。来訪者が全員犬好きとはかぎらない。なかには犬がコワい人だっているのだ。
1. 来訪者が配達人(郵便物、小荷物)の場合
玄関チャイムが鳴ったらテスに「まて」をさせ、まず細めに開けたドアの隙間から「犬がいます」と配達人に告げる。そしてそのまま、なるべくドアの隙間を広げずに素早く郵便物や小荷物のやりとりをする。まるでヤバいブツの取引きだが、たいていの場合それですむ。困るのは配達人が犬好きの場合で、そういう人は、姿が見えなくても体じゅうから犬好きオーラが出ているらしく、勝手にコマンドを解除したテスが突進してくることがある。
2. 配達人(大荷物)の場合
配達人が玄関内や室内に入ることが多いので、どこかの部屋に閉じこめる。子犬時代は不憫に思って、見るだけならとドアを数センチ開けておくようにしていたが、さいきんでは前足でドアの隙間を広げる知恵と石頭で強行突破してくるので、爪の先も引っかからないよう締めきることにしている。
運び込むのに時間がかかるときは、ドアのすぐ向こうで気配をうかがっているにちがいないテスに「いい子ね」「おりこうね」などと、ときどき声をかけるが、配達人が不気味に思うといけないので、「犬がいるんです」といちおう断る。
3. 遊びに来る人(全般)
事前にテスの大きさや性格などを伝え、汚れたり、抜け毛だらけになってもかまわないような服装で来るようおすすめる。また、ばっちいテニスボールやデンタルコットンや縫いぐるみを触ることになるので、必ず人数分のおしぼりを用意しておく。お帰りになる前に服にブラシをかけて、付着した抜け毛を取って差し上げる。はなはだしい場合はガムテープを使用する。
4. 遊びに来る人が犬コワい
しょうがないので、お帰りになるまでどこかの部屋に閉じこめておく。
5. 遊びに来る人がひそかに犬コワい
いい年をしたおとなで「犬コワい」と宣言する人はまずいないから、初めて遊びに来る人の場合は注意が必要だ。はしゃぎ回るテスを見て顔がこわばっていたり、頭を撫でようとする手に迷いがあったり、へっぴり腰だったら、その人は犬コワいと判断。「ぜったい咬まないのでだいじょうぶです」とキッパリ言う。犬コワい人はようするに咬まれるのがこわい。ちなみに猫コワい人は爪で引っ掻かれるのがこわい。
6. 遊びに来る人が犬好き
これはもう好きなだけかまっていただく。
気の毒なのは、犬好きだけど犬と生活していない人である。テスに要求されるがままにのべつかまってしまい、お食事やお話どころではなくなる。
「無視して下さればあきらめます」とアドヴァイスしても、なかなかそうは行かないらしい。
すごいなあと思うのは犬を飼っている人だ。適当にかまったあとは、ごく自然にお食事やお話に集中しておられる。すると、あ〜ら不思議。テスもおとなしく足元や部屋の隅でくつろいだりするのである。(2004.1.25)
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